お宝探しとライバル

コスモス日記  

 

 

 

   「お宝探しとライバル」

 

 

 

  私は仕事後、自宅近くのスーパーに時々寄り道する事がある。スーパーに入ると、入り口正面の惣菜コーナーそっちのけで真っ先にスィーツコーナーに向かう。走りたい気持ちを懸命に抑え、出来るだけ平静を装いながらそこへ向かう。

 

  目的地のスィーツコーナーに着くと、運が良ければ半額になったプリンや、エクレア、ロールケーキなど多くのお宝に遭遇することができる。以前は通常品に紛れてランダムに値引きシールが貼られていた。最近は方針が変わった

 

のか、値引き商品のみで集められた一角が設けられ、そこに様々なお宝スィーツが並ぶようになった。しかし、そのわかりやすいレイアウトになった事を素直に喜べない自分がいる。以前はスィーツコーナーに行って、通常品の中から宝物探しをするように、半額シールの貼られたお宝を見つけ、手にした時の高揚感が私は好きだった。

 

  そしてそんな私にライバルのおじちゃんがいた。

 

ある日、お宝探しをしていた私の買い物カゴを見て、そこに宝物が眠っている事を知ったのか、おじちゃんもすぐに商品棚に近づき、同じようにお宝探しを始めた。その様子は真剣そのものだった。

 

 

 

  またある日は、全然値引きシールの貼られていない棚にそのおじちゃんはいた。

 

  (もう…、あっちの棚に行けばあるに…!まさか見つけられなかったのかな…)

 

  なんだかもどかしい気持ちになったが、さすがに声かける勇気はないので、おじちゃんに買い物カゴの中のお宝をさりげなく見せてみた。するとハッとしたような顔をしたおじちゃんは、私の買い物カゴのお宝を見ると、迷う事なく目的の商品棚へ向かった。私は一人にんまりした。

 

  またある日は、私が行った時には既におじちゃんにお宝をほとんど大量ゲットされていて、惨敗した事もあった。おじちゃんは意気揚々としていた。

 

  私にとってそのおじちゃんはいつの間にかライバルになっていた。