豪邸

コスモス日記 豪邸

「豪邸」
  実家の近くに大きな豪邸がある。
その豪邸は、私が幼稚園に行ってた頃から毎日目にしていた。
  毎日の幼稚園バスが停まる丁度目の前にあったからだ。
  そびえ立つ頑丈な門扉。
その横には、巨大で真っ白なシャッターゲート。お洒
落な洋風の建物で、煙突や大きな窓がたくさんあり、
ため息が出るような素敵な豪邸だった。
  普段は外から中の様子が全く見えないのだが、ごくたまにシャッターゲートが上がる瞬間を目にすることがあった。
  子ども心にワクワクした気持ちが抑え切れなかった。
  シャッターゲートが上がると高そう な外車が数台見える。
  想像をはるかに越える中庭の広さ。

 

外から見えていた柳の木は、さらに迫力を増し、ゆらゆらと枝がしだれ、どこか妖しげな雰囲気を醸し出していた。
でもシャッターはそう長くは上がっていない。気づけばまた、あっという間にシャッターは降り、外界との距離をとるかのように封鎖される。
  もっと見たい!どんな人が住んでるんだろう。どんな部屋になってるんだろう。
  憧れとミステリアスでいっぱいのその豪邸が、いつも気になってしょうがなかった。

 

(何度か夢にも出てきたほど。)
こんなにも魅了してやまないその豪邸。このなんとも言い難い不思議な気持ちは、自分だけの秘密にしていた。
  今思うと何故あんなにも心惹かれたのかわからない。感受性豊かな子ども心ならではの感情なのだろうか。
  実際、大きな豪邸に住みたいという願望もこれっぽち
もない・・・・。
  今は豪邸とは程遠い、この狭い小さな部屋が 私にとっての一番のお城だ。
私にとっての一番のお城だ。